コンテンツへスキップ

絵画の中の光[日本と欧米・あかり文化の違い]

日本の住宅はシーリングライト、欧米にはスタンドが多用されるなど、国によって使われる照明器具の好みは違います。好む光が違うので、おのずと器具も違ってきます。では、日本人が好む光、欧米の人がの好む光はどこが違うのでしょうか。今回は絵画の中の光をとりあげて、その違いを検証してみました。

 

絵画の技法の違い

欧米で主流の絵画は油絵です。顔料と固まる油で描く、透明性が高く艶の強い描画材料です。日本でも油絵はとても多く描かれていますが、日本独自の文化の絵画は日本画です。顔料を水で溶いて、膠で固めます。どちらかといえばマットな仕上がりの描画材料です。

 

陰影と輪郭線

現代美術においては、絵具の違いと描き方の違いとの関係はそれほど関係ありませんが。近代以前においては、油絵と日本画の伝統的な描き方違いは明確です。油絵は陰影でその形を描きますが、日本画は輪郭線で描きます。よって、洋画はコントラストが高い絵が、日本画はコントラストが低いフラットの絵が多くなっています。

 

代表的な油絵を一点

洋画のなかでもレンブラントは光を匠に使った作品が多く「光と影の画家」とか「光と影の魔術師」とも言われます。人物に当てる半逆行光のライティングはレンブラントライトと呼ばれ、ポートレート写真などには現在でも多用されています。この絵を見ると陰影の表現がとても重要であることが解ります。1629年にレンブラント23歳頃に描かれた自画像です。

 

代表的な日本画を一点

近代の代表的な日本画、美人画を得意とする上村松園が描いた序の舞です。1936年松園60歳頃の作品です。切手の絵柄にも使われてる良く目にする絵です。ここで描かれている人物は輪郭線で表現されています。影は殆ど描かれていません。コントラストも低くとてもあっさりした表現です。しかし、描かれた女性の存在感はとても強く感じます。

 

影の扱いが違う

比べていただくとよく解ると思います。影の扱いが違いが絵の描き方を変えています。油絵は影を描いていて、日本画は影を描いていない。日本画にはなぜ影が無いのでしょうか。私は日本人は文化的にあまり影を重要視していないと推測しています。これはこの絵画だけでなく、その他の芸術表現にもみられる傾向です。この事を、ちょっと乱暴にまとめてみますと、日本人は影が嫌いなんだと思います。どこか暗いこところがあると気になる、その心理が日本にあり、文化にも大きく影響しているのだと、推測しています。

 

日本の住宅照明

日本の住宅に多いシーリングライトは部屋の真ん中にある、やや大きめの照明器具です。四角もありますが、殆どが丸型です。この器具から出る光は部屋全体に広がり、影が少ない空間にします。この器具は日本人が好む光を安価に創り出してくれる、理想的な器具だと思います。どこの住宅にもたくさん付いているので、最近すこし嫌われているようですが。

 

 影を嫌う他の事例

絵の他にも同じ様に、影を嫌う傾向があります。別の機会に、他の事例をアップしたいと思います。

 

writer:馬場美次